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高林龍先生と多様性
 もともと裁判官や最高裁調査官として活躍されていた高林龍先生は、学者になられてからも幅広く文献をお読みになっていたようで、私のマニアックな論文まで見つけては、ときどき引用して下さっていた。それだけでもありがたかったが、あるとき高林先生が、早稲田大学のロースクールで非常勤として著作権法の講義をしてみないかと私に声をかけて下さったのである。私はすでに京大ロースクールでも非常勤として著作権法の講義を担当していたが、早稲田でのそれは私にとってもちろん新たな挑戦だった。しかし結局、2006年から(留学による一回休みを挟んで)足かけ7年間、早稲田のロースクールで非常勤として講義することになったのである。この間、講演会やシンポジウムに登壇する機会も数多くいただいた。
 高林先生は、これまでにも、今村哲也さん(現・明治大学准教授)、張睿暎さん(現・東京都市大学准教授)、安藤和宏さん(現・早稲田大学上級特別研究員)、小川明子さん(現・早稲田大学招聘研究員)や、帰国後、中国で教授職に就いた兪風雷さん(現・天津大学副教授)や謝晴川さん(現・南開大学副教授)など、多数のお弟子さんを育てられたが、皆さん実にさまざまなバックグラウンドを持った方々ばかりである。そして今も、大学院の修士課程や博士課程には、研究者志望の日本人だけでなく、弁理士、特許庁職員、企業の知財部員といった社会人、そしてブラジル人弁護士や中国人弁理士といった留学生、さらには御年70代後半になる元法務室長といった、実に多様な院生に囲まれている。
 そして、私もファミリーに加えていただいた一人である。大学の世界では、他大学出身の教授達が自らを「外様」とか「外人部隊」などと呼ぶことがある。しかし、出自や年次を超えて多様なものを受け入れる自由な空気が、ここにはあると私は感じている。
 「集まり散じて人は変われど 仰ぐは同じき理想の光」というのは、早稲田大学校歌3番に登場するフレーズである。来る者を拒まず分け隔てなく受け入れるスタンスというのは、ひょっとしたら早稲田の校風に通じるものがあるのかも知れない。



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